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Lee-Byung-hun addicted

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第8話

『Recollection』 第8話



ビョンホンが日本から帰ってきてからかれこれ1週間。

帰って来て以来

彼はボストンにいる二人のことが気になって仕方がなかった。

仕事をしている間は気が紛れたが

終わればすぐ揺のことを思い出す。

幸運なことに映画のプロモーションが忙しく、

ビョンホンは早朝から夜遅くまでの過密スケジュールに忙殺され、

彼は何とか気持ちの平静を保っていた。

一方、撮影が終わった後も

ビョンホンはスエと一緒に行動することが多かったが

彼は撮影が終わった時点で

それとなく彼女に今までの恋愛が擬似恋愛であったのではないかと

匂わせていた。

しかし、

正直なところ今のビョンホンはそれどころではなく

彼にとってそんなことはどうでもいいことだった。

彼の頭の中は揺のことでいっぱいだったから。

肝心のスエはというと全く気にすることなく今まで通りに彼に甘えていた。

ただ、食事に誘ってもなかなかいい返事をしない彼に

正直すこしイラついていた。

その日も雑誌のインタビューを受け、

終わったのはもう夜の9時を回っていた。

「オッパ。お腹すいちゃった。ねえ、ご馳走してくださいませんか?」

「う~ん。みんなどうする?」

「明日、早いから今日はお開きにしようぜ」

ビョンホンの浮かない顔を見てオ・ダルスが助け舟を出した。

「そうだよね。じゃ、今日はこれで解散にしよう。お疲れ様。」

心がそこにないビョンホンは

スエを残してさっさと車に乗り込もうとしたが

何故だか彼女が先回りして車の前で待っていた。

「オッパ。どうしてもお母様のサムゲタンが食べたいの。

お母様にお願いしてくださらない?」

「え・・・・こんな夜に?」

「だめかしら。」

「だめかしらって・・・・ちょっと待って。」

断りきれないビョンホンはオモニに助けを求めようと電話をかけた。

オモニがダメだといえば簡単に引き下がるだろう。

「もしもし、オモニ?今仕事終わったんだけど、

スエさんがどうしてもオモニのサムゲタンが食べたいっていうんだけど・・・

こんな夜にだめだよね。」

「えっ、大歓迎よ。連れていらっしゃい。

ちょうどこれから作ろうと思っていたところだったから。」

「うそ。・・・・・・本当にいいの?」

「ええ。じゃ待ってるわよ~」

オモニは嬉しそうに電話を切った。

「ビョンホンssiからですか?」

「そう。ささ、サムゲタン作らないと。揺ちゃん手伝って」

(こんな夜にサムゲタン?・・・)

揺には全く見当が付かなかった。



ピンポーン。ドアのチャイムが鳴った。

「揺ちゃん、出てくれる?」

「はい。もしもし?」

「えっ!揺?揺なの」

ビョンホンは急に元気な声になってそういうと

開きかけた門をすり抜け庭を全力疾走した。

「オッパ~。待って~どうしたの?」

ビックリしたスエが慌てて付いてくる。

揺も玄関を開け外へ飛び出した。

玄関前で鉢合わせした二人。

「揺・・・帰って来てくれたんだね。」

「ビョンホンssiやっと・・・・やっとたどり着いたよ」

そういうと二人はしっかりと抱き合った。

そんな二人を驚いた様子で見つめていたのはスエだった。

「オッパ・・・・」

スエの存在に気づいた揺は慌てて彼から離れた。

「どうしたの?」

とビョンホン。

「だって・・・お客様。・・」

「あ~。この間はお前が急に行っちゃったから紹介できなかったからな。

こちら今回の共演者のスエさん。

とってもお世話になったんだ。

スエさん、これは僕の奥さんの揺。」

「お・く・さ・ん?」

スエは信じられない顔をしている。

「サムゲタン出来てますからどうぞ。」

少しビックリしながらも奥さんの揺は奥さんらしく彼女をエスコートした。




ビョンホンは上機嫌だった。

映画の撮影の話をいっぱい揺に話して聞かせた。

彼が嬉しそうにすればするほどスエの顔は沈んでいくようだった。

「ビョンホンssi」

見かねた揺はちょっと怖い声で言った。

「何?揺。」

呼ばれただけで嬉しそうなビョンホン。

「スエさんにはきちんとわかるように誠実にお話したのかしら。」

「えっ?何を」

「何をって。あなたが撮影中何を考えていたのかを。

わかりやすくきちんとね。

私、お母様とジャグジーに入ってくるから

その間にきちんと誤解は解いて誠実にお話してね。

お母様行きましょう。」

「ええ。」

オモニはいつになくしっかりした揺を見て正直びっくりしていた。



「スエssi。すまない。」

二人がいなくなるとビョンホンはゆっくりと話し始めた。

「僕は最初から君には全く恋愛感情はなかった。

ただ好意を寄せてくれているのがわかってから

それを断ったら作品に影響が出るかもしれないとの一心で

撮影が終わるまでは

はっきりと自分の気持ちを君に伝えるのは控えようと思ったんだ。

それが君に誤解をさせてしまって

辛い思いをさせてしまったようだ。本当にすまない。

僕はさっき奥さんだって紹介した女性のことを

心から愛していて

今は事情があって結婚できないけれど

いずれ必ず結婚しようと思っている。

君にもそう思える素敵な男性が現れることを祈っているから。

マスコミには

はっきり擬似恋愛で実際の僕を見たら幻滅したって

言ってもらってかまわないから。

本当に気持ちに答えられなくて・・すまなかった。」

そういうと彼は深々と頭を下げた。

「オッパ。もういいんです。

薄々気がついていたんですけど認めるのが嫌だったんです。

この間のパーティーでさっきの方に会って以来、

オッパの演技が少し乱れたの私にもわかりました。

プライベートで何か問題が起こったとき

演技に支障が出ないようにすることは先輩でも難しいことなんだって。

この映画を無事にいい気持ちで撮り終えられたのは

先輩のおかげです。本当にありがとうございました。」

「ありがとう。そう言ってもらえてよかった。

ほら、サムゲタン熱いうちに食べて」

「はい、本当に美味しいです。・・・それに・・・奥様素敵な方ですね。」

「そうだろ。俺も本当にそう思うんだ。」

ビョンホンはそういうと鶏の足の骨をパクッとくわえた。



「揺ちゃん、何だかずいぶん前よりしっかりしたわね。」

「えっ、そうですか?あ~結構重いものとか運んでましたから

やっぱり太くなりますよね。」

揺はそういいながら自分の二の腕や太ももをなでた。

「ふふふ・・・そういうところは変わってないかしら。

そうじゃなくて人間的にしっかりしたっていうこと。」

「あ・・・・そうですか?

それなりに苦労してますから成長しましたか?」

揺は誉められてちょっと恥ずかしそうに頭をかいた。

「ごめんなさいね。息子のために苦労が絶えなくて」

「ああ、お母様。そういう意味じゃないんですよ。全然。

彼とする苦労は苦労だと思っていませんから。」

揺は慌てて自分の言葉を訂正した。

「本当にありがとう。これからも息子をよろしくね。」

「はい、お母様。肩揉みましょうね。」

二人はゆっくりと湯に浸かっていた。

「あら、あの二人大丈夫かしら。」

「大丈夫ですよ。私たちの傍で

浮気が出来るほど彼肝据わってないですから。」

「あら、本当に」

「はははは・・・」

二人は高らかに笑った。


「クシャン、クシャン!あ~風邪かな。」

ビョンホンが鼻をすすって言った。

「オッパ、それ噂されているんですよ。きっと」

「そうかな・・・アイツどんな噂してるんだろう。」

ニヤニヤしながらビョンホンは言った。

「先輩がそんなことで嬉しそうな顔するなんて意外です。

相当奥様にイカレてますね。」

「そうなんだよ。わかっちゃった?」

「ああ。もう帰りたいです。」

スエは笑いながらそう言った。





「また遊びにいらしてくださいね。私いないかも知れませんけど。

通い妻だから」

揺は車に乗ったスエを見送るとそう言った。

ビョンホンは隣で嬉しそうに彼女を見つめていた。

「はい、奥様。奥様とお話したいから先輩がいない時にお邪魔しますね。」

「はい、じゃ、連絡お待ちしてます。」

揺はそう言ってにっこりと笑った。

「気をつけてね」とビョンホン。

「はい。先輩じゃ、また仕事で。」

そういい残すと彼女を乗せた車は走り去った。

「若くて可愛い女の子の方が良かったんじゃない?」

意地悪そうに揺が言った。

「僕は若くなくても可愛くなくても胸が小さくても揺がいい」

ビョンホンは嬉しそうにそういうと揺を後ろから抱きしめた。

「ビョンホンssi・・・・」

「揺・・・・・」

ふたりは見つめあい120日ぶりにキスをした。

「あ・・・」ピシャッ!

ビョンホンの頬を揺が平手打ちした。

「何!」

「蚊、蚊がとまってたのよ」

「あ~もうムードなんかあったもんじゃない」

ビョンホンはちょっと不機嫌になった。

「まあまあ、そう言わずに。今夜はゆっくりお土産上げるから・・・ね?」

優しく耳元で揺がそうささやいた。

ビョンホンは急にニヤッと微笑むと揺の手をとって庭を駆け抜けた。


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